弁護士
本橋 光一郎
準確定申告は、被相続人(死亡した方)の所得税について申告するものです。
人(被相続人)が死亡した場合、その故人は所得税の確定申告をすることができません。
そこで、その相続人が代って確定申告をすることになります。
これを「準確定申告」と呼びます。
準確定申告の申告者は、相続人又は包括受遺者となります(国税通則法5条1項)。
この包括受遺者としては、包括受遺者が法人の場合であっても、申告者となります。
なお、相続税申告の場合は、申告義務者は個人となりますので、包括受遺者が法人である場合には除かれます。
相続人、包括受遺者が複数名いる場合、準確定申告は、原則として、それらの者の連署により申告書を提出することになります。
なお、相続人間で争いがある場合、各相続人が別々に準確定申告をすることもできますが、この場合、他の相続人らに申告した内容を通知することが必要とされています。
被相続人の死亡当時の住所地を管轄する税務署となります。
相続人の住所地を管轄する税務署ではありません。
1月1日から死亡した日までの所得についての申告を相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行なうこととされています。
知った日が6月5日なら4か月後の応当日である10月5日が提出期限となります。
通常の確定申告は、前年1月1日から12月31日までの所得について、翌年の2月15日~3月15日までに申告することとされているのと、大いに異なりますので、注意が必要です。
なお、対象期間内の所得につき、納税額がないときは、準確定申告手続は不要となります。
また、税金還付の申告となる場合は、必ずしも、4か月以内の申告でなくても、4か月経過後の準確定申告であっても、受付けられ、還付が受けられるものとして取扱われます。
・準確定申告書
・同付表(各相続人の氏名、住所、被相続人との続柄、相続分、各相続人の納付又は還付税額等を記載したもの
・給与や年金の源泉徴収票
・医療費控除のための領収書
・生命保険・損害保険の控除証明書
・その他通常の確定申告の場合と同様な添付書類
通常、次の場合には、準確定申告が必要となることが多いです。
①個人事業(自営)を行っていた人
②2か所以上から給与を受けていた場合
③給与収入が2000万円を超えていた場合
④給与所得や退職所得以外の所得が合計で20万円以上あった場合
⑤医療費控除の対象となる高額の医療費を支払っていて、準確定申告をすることになり所得税の還付を受けられる場合
⑥貸付金の利子収入や家賃などの不動産収入を受け取っていた場合
相続税申告は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日から10か月以内に行なうこととされています。
それに先立って、準確定申告は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日から4か月以内に行なうこととされています。
被相続人が不動産を保有していて不動産収入があった場合ですと、準確定申告がまず第1のハードルで、それを越えて、次は相続税申告がさらに大きな山場といえます。
準確定申告、相続税申告とも、相続人の範囲や相続分等を判定し、被相続人の財産状況を把握した上で、税額計算等をする必要があります。
円滑に遺産相続手続を進めていくためには、準確定申告、相続税申告とも、できる限り相続人間で協調し、足並みをそろえていくことが望ましいことは言うまでもありません。