相続税申告期限までに、遺産分割協議が成立していることがベストです

弁護士

本橋 光一郎

  • 1.相続税申告期間

    相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日から10か月以内にしなければなりません。
    この申告期限は、同時に納税の期限にもなっていますので、注意を要します。

    遺産分割協議が成立していないときでも、相続税の申告は行なう必要があります。
    その場合は、法定相続分に基づいて相続人が取得したものとして、税額を算定し、相続税の納付もしなければなりません。
    その後に、遺産分割の協議が成立したときは、協議内容に応じて、修正申告、更正請求などを行なうこととなります。

    なお、遺言があるときは、遺言内容に応じた相続税申告をすることになります。

  • 2.申告期限内に遺産分割協議が成立していることのメリット

    申告期限内に遺産分割協議が成立している場合には、相続税の優遇・特例措置が多く認められています。

    それは、
    ①配偶者に対する税額軽減
    (配偶者の法定相続分の範囲内、あるいは、配偶者が実際に相続した相続財産のいずれか少ない価額については、無税扱い)
    ②小規模宅地についての課税価格の低減
    (自用地については、一定条件の下で、一定面積まで、課税額を大きく減額する扱いとすることができる)
    ③農地等の相続税の納税猶予
    ④相続税の取得費加算の特例
    ⑤事業承継による納税猶予の特例
    ⑥物納
    などがあげられます。

  • 3.申告期限内に遺産分割協議ができないことのデメリット

    申告期限内に遺産分割協議ができないことのデメリットは、上記2の優遇を受けられないこととなります。

    なお、上記2①②については、申告期限後3年以内に遺産分割協議ができれば、修正申告や更正請求により、その優遇を受けることができます。
    しかし、上記2③〜⑥については、優遇を受けられません。

    注意しなければならないのは、申告期限は、相続税納期限でもありますので、申告期限内に遺産分割協議が成立していなくても(1で述べましたとおり)法定相続分に基づいて、相続税申告を行なう必要があり、法定相続分に基づいて取得する相続財産につき、納税義務が生じてしまいます。
    そして、相続税の申告をしなければ無申告加算税(本税の5%又は10%)、納税が遅れれば、延滞税(14.6%)その他がかかってきます。

  • 4.まとめ

    配偶者に対する相続税額の軽減、小規模宅地の課税価格の計算特例その他の優遇措置を受けられるかどうかは大変重要な事柄です。
    相続税申告期限内に遺産分割協議を成立させて、それらの優遇措置を受けるのが、望ましいです。
    また、遺産分割協議が成立していず、実際に相続財産の分配を受けていない場合でも、法定相続分に基づいて、相続税申告をする必要があり、その法定相続分に対応する相続税を納めなければなりません。
    その相続税を納めないと延滞税その他がかかってきてしまいます。

    それらを総合考慮しますと、申告期限内に遺産分割協議を成立させて、相続財産の分配を受けて、その分配を受けた財産の中から相続税の納税も済ませるというのがベストと言えましょう。