弁護士
本橋 美智子
中小企業の経営者が高齢になった場合には、その事業を誰が引き継ぐかが大きな問題になります。
中小企業の経営者は、会社の株式を所有しているだけでなく、会社や工場の土地、建物を個人が所有していたり、会社の借入金について経営者が連帯保証していることも多いために、会社の事業承継と個人の相続問題が密接に関連することになります。
ですから、中小企業の経営者は、早めに事業承継と相続の問題に対処しておくことが重要です。
これは、経営者が日頃から心がけることですが、特に、経営者が60歳位になったら、会社の資産の整理を考えるべきでしょう。
会社の事業に使用している不動産が、経営者の個人所有の場合には、その不動産を会社に売却する、あるいは少なくとも会社と経営者個人との間で、客観的に公正な賃貸借契約書を締結しておくことが大切です。
会社によっては、形式的な賃貸借契約書はあるが、それは名ばかりで賃料が相場より非常に安かったり、あるいは実際には支払っていない場合もあります。
また、経営者と会社との貸借もできる限り解消するように努力することです。
仮に、このような措置が取れないほど会社の売り上げ、利益が出ていない場合には、営業の継続自体を再検討することも必要となるでしょう。
中小企業の場合、会社の借入金について、社長が連帯保証人になっていることが通常でしょう。
そして、この連帯保証債務を引き継がなければならないために、事業の後継者がみつからない場合も多いのです。
しかし、平成25年12月には、「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、経営者の保証をとらない融資や、既存の保証契約の見直し等の推進の方向が示されています。
ですから、経営者としては、銀行との交渉や新規借入れを通じて、できるだけ連帯保証人をはずすことを考えることが大切だと思います。