弁護士
篠田 大地
小さいころに両親が離婚し、その後母親とともに暮らして父親とは縁遠くなっていたところ、この度父親が死亡したとの連絡を受けた、などというケースがあります。
逆に、自身が配偶者と離婚したが、配偶者が子供を連れて行ったという場合、自分が死亡したら、自分の遺産はどうなるか、という疑問を持つ方もいます。
このような場合、遺産相続については、どのように考えることになるのでしょうか。
以下のようなケースを考えてみます。
・XはA(父)とB(母)の子であるが、AとBはXが幼いころに離婚し、BがXの親権者となる。
・その後、AはCと再婚し、Dを設ける。
・また、BもEと再婚し、Fを設ける。
・今般、Aが死亡した。
A(父)とB(母)が離婚をしたとしても、XにとってA(父)との間の相続権が変わることはありません。
したがって、A(父)が死亡した場合も、Xは子としての相続権を有することになります。
A(父)はCと再婚し、再婚後の子としてDがいますが、DとXの相続分は同じとなります。
上記のケースにおける相続分は、再婚相手であるCが1/2、再婚後の子であるDが1/4、前妻との子であるXが1/4になります。
再婚した場合、連れ子を新たな夫との間で養子縁組することもあります。
上記のケースでは、例えば、B(母)の再婚相手であるEがXと養子縁組をすることもあります。
この場合にも、養子縁組によって生みの親であるAとの親子関係がなくなるわけではないため、XはAの相続権を有することになります。
なお、この場合、Xは養親であるEとの関係でも相続分を有することになります。
そして、その相続分は、養親の実の子と同じです。
上記のケースを前提に考えると、Eが死亡した場合の相続分は、再婚相手であるBが1/2、再婚後の子であるFが1/4、養子であるXが1/4になります。
子ども間で父の扱いが異なっていた場合はどう考えたらいいのでしょうか。
たとえば、Aは再婚後の子であるDに対してのみ生前に多額の贈与を行い、Xに対してはなにもしていなかった、などということがありえます。
このような場合、贈与の内容によっては、特別受益に該当することがありえ、遺産分割において、最終的なXの取得額がDより多くなることもあり得ます。
生前贈与以外にも、Dに対しては多額の学費を出していたのに、Xに対しては何もしていない、などということもありえますが、このような場合に特別受益が認められるかどうかはケースバイケースといえます。
Aが死亡した場合に遺言がないと、相続人であるC、D、Xは、Aの遺産に関して遺産分割協議をする必要があります。
C、DとXとの間でさえ、円満に遺産分割協議を行うことが難しいケースも多いと思われますが、Xが未成年の場合には、Bが親権者としてXの代わりに遺産分割協議に加わることになりますので、余計に協議の成立が難しいケースが多いと考えられます。
以上のように、長期に遺産分割協議が成立しないという事態を避けるためには、Aが遺言を作成しておく、などあらかじめ準備をしておくことが必要です。