弁護士
篠田 大地
夫婦で一緒に遺言を作成しようと考える場合も多いと思います。
たとえば、子どもがいない夫婦の場合、夫は自分の財産を妻に、妻は自分の財産を夫に遺す、などという形で遺言を作成しようとするケースはよく見かけられます。
このように、夫婦で遺言を作成しようという場合、注意点があります。
民法975条は、「遺言は、2人以上の者が同一の証書でこれをすることができない」と定められています。
これは、2人以上が同じ紙に遺言を書くことを禁止したもので、2人以上が同じ紙に遺言を書いた場合、その遺言は無効になります。
上述の例だと、同じ紙に、夫が死亡したら自分の財産はすべて妻に渡し、妻が死亡したら自分の財産はすべて夫に渡します、などと書いてある遺言は無効になります。
このような規制がなされているのは、共同して遺言を作成すると、もう一方の作成者の意思が影響して、自由に遺言を作成できないからだといわれます。
ただ、上記で禁止されているのは、あくまで同じ紙に遺言を書くことであり、同時期に別の紙に遺言を作成することが禁じられているわけではありません。
したがって、夫婦で一緒に遺言を作成しようという場合、同じ紙には書かず、それぞれが別の紙に書くよう注意する必要があります。
後述のとおり、民法974条において、公正証書遺言では相続人は証人または立会人となることができないとされているところ、自宅で自筆証書遺言を作成するなどの場合に、相続人が立ち会うと遺言が無効となるかどうかについては、高知地判平成7年8月21日は消極に解し、有効と判断しました。
夫婦で同時期に公正証書遺言を作成することも可能です。
ただし、公正証書遺言を作成する場合、証人2名以上の立ち合いが必要とされるところ(民法969条1号)、相続人は証人または立会人となることはできないとされています(民法974条2号)。
したがって、通常、公証役場において夫婦が同時期に遺言を作成する場合には、一方の配偶者は証人とはならず、また、立ち合いも行いません(別室で待機するなど)。
夫婦で同時期に公正証書遺言を作成することも可能です。
ただし、公正証書遺言を作成する場合、証人2名以上の立ち合いが必要とされるところ(民法969条1号)、相続人は証人または立会人となることはできないとされています(民法974条2号)。
したがって、通常、公証役場において夫婦が同時期に遺言を作成する場合には、一方の配偶者は証人とはならず、また、立ち合いも行いません(別室で待機するなど)。
上記のとおり、夫婦が同じ紙で遺言を作成した場合、その遺言は無効となるのが原則ですが、以下のように例外的に有効になりうる場合もあります。
①夫婦それぞれの遺言内容が同じ紙に書かれているものの、書いたのが一方である場合
たとえば、夫が一人で、自分の遺産の処分内容を書くとともに、同じ紙に妻の遺産の処分内容を書き、このような遺言を書いたことを妻は知らなかった、などということがありえます。
このような場合、妻の遺言内容は、妻自身が書いているわけではないため、無効となりますが、夫が自分の財産の処分について書いた点は有効となる可能性があります(東京高決昭和57年8月27日)。
②夫婦が別に書いた遺言書が合綴されている場合
たとえば、夫が書いた遺言書と妻が書いた遺言が合綴されて、それぞれのページに夫の契印がなされている場合でも、両者が容易に切り離すことができるようなときには、有効となる可能性があります(最判平成5年10月19日)