弁護士
篠田 大地
たとえば、父が所有する土地上に、子が建物を建築して居住しているということがあります。
また、父が所有する建物に、子が居住しているということがありえます。
このようなケースで、父が死亡した場合、相続財産である父の所有する不動産の評価はどのように行われるのでしょうか。
不動産の評価額としては、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、時価など、さまざまな算定方法があります。
遺産分割調停において、各相続人が合意すれば、どの評価方法によることも可能ですが、遺産分割審判となった場合には、時価により評価されることになります。
より詳しくは、「遺産分割において不動産はどのように評価するのでしょうか」をご覧ください。
父が所有する土地上に、子が建物を建築して居住しているケースにおいては、子が父に地代を支払っている場合と、支払っていない場合があります。
子が無償で土地を利用している場合、子は土地を使用貸借していると考えられます(固定資産税だけ負担しているような場合も、こちらです。)。
このような場合、土地に使用借権の負担があると考えられますので、土地の評価額は更地価格の1~3割程度減価されることが通常です。
ただし一方で、子は土地の使用借権を父から取得していることになります。
これは、更地価格の1~3割程度となりますが、この土地の使用借権の取得は、特別受益となることがあります。
この場合、持戻免除の意思表示があるか否かを検討する必要があります。
なお、親の扶養のために同居している場合もあります。
たとえば、親から一緒に住んでほしいといわれ、親の土地上に建物を建てて同居するような場合です。
このような場合も、上述のとおり、子は土地の使用借権を取得していることになります。
しかしながら、このケースでは、土地の使用借権の取得は、特別受益にはならないと考えることが通常です。
子が父に対して地代を支払っている場合、子は借地権を有していると考えられます(ただし、権利金の授受がなかったり地代が低廉の場合には別に考えられる可能性もあります)。
このような場合、土地に借地権の負担があると考えられますので、土地の評価額は更地価格の6割から8割程度減価されることになります。
具体的な借地権額は、国税局の路線価図の記載を参考とすることが通常です。
ただし、上述のとおり、権利金の授受がなかったり地代が低廉の場合には、減価額を低く見ることもあります。
父が所有する建物に、子が居住しているケースにおいても、子が父に家賃を支払っている場合と、支払っていない場合があります。
子が無償で建物を利用している場合、子は建物を使用貸借していると考えられます。
このような場合も、建物に使用借権の負担があると考えられますが、建物の評価額の減価を行うか否かはケースバイケースです。
なお、このような場合、建物を無償していることについて、特別受益になることは基本的にないと考えられています。
子が父に対して家賃を支払っている場合、子は借家権を有していると考えられます(ただし、家賃が低廉の場合には別に考えられる可能性もあります)。
このような場合、建物に借家権の負担があると考えられますので、建物の評価額は3割程度減価されることになります。