配偶者居住権の評価はどのように行われますか

1 配偶者居住権の評価はなぜ必要となるのか

配偶者が遺産分割において配偶者居住権を取得する際は、配偶者居住権についても他の遺産とともに自らの具体的相続分の中において取得することになるとされているので、配偶者居住権についての財産的価値を評価しないと、他の遺産の取得内容にも影響が及んでくることとなります。
また、配偶者居住権の負担のある建物を他の相続人が相続する場合、その相続人が取得する建物の価値を評価する場合にも、配偶者居住権部分を控除する必要がありますので、その意味でも、配偶者居住権を評価する必要があります。
このように遺産分割の内容を定める際に配偶者の取得する配偶者居住権の価額を評価しておかないと、全体の相続人らの取得する遺産内容を決められないということがあります。

また、相続税申告をする際にも、各人が取得する遺産の価額を申告する必要がありますので、配偶者居住権を取得した場合の配偶者居住権の価額や、配偶者居住権の負担がついている建物所有権を取得した場合の建物の価額を定める際にも、(控除される)配偶者居住権の価額を評価する必要がでてきます。

2 配偶者居住権の評価方法

配偶者居住権の評価については、次のような方法があるといわれています。
① 居住建物の賃料相当額から配偶者の負担する通常の必要書類を控除した価額に存続する期間に対応する現価率を乗じた価額
② 居住建物及び敷地の価額から配偶者居住権の負担付の各所有権の価額を控除した額

配偶者居住権に関わる平成31年度税制改正大綱が国税庁から(平成30年12月14日)発表されました。
それによりますと、次のとおり算定するとされています。

〇建物の配偶者居住権(配偶者が取得する財産)の評価方法

 ① (残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数
 ② 建物の時価×①×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
 ③ 建物の時価-②

〇建物の所有権(建物を承継した人が取得する財産)の評価方法

 建物の時価-上で求めた配偶者居住権の価額
(注)
・残存耐用年数=法定耐用年数に1.5をかけた年数-建物の築後経過年数
・存続年数=原則として、配偶者の平均余命年数(あるいは、遺言、死因贈与、遺産分割などで存続年数が定められた場合は、その配偶者居住権の存続年数)
・①の残存耐用年数、残存耐用年数-存続年数のいずれかがゼロ以下となる場合、①はゼロとする
・建物の時価=配偶者居住権が設定されていないときの建物の相続税評価額
・民法の法定利率=現時点では3%(民法404条2項)(3年ごとに変動する、民法404条3項)

3 遺産分割における評価

家庭裁判所における遺産分割においては、共同相続人全員の合意があれば、その合意のある配偶者居住権の評価によることになると考えられます。
必ずしも税制改正大網による配偶者居住権の評価額どおりでなくでも良いと考えます(家庭裁判所の実務としては、土地、建物等の評価についても必ずしも相続税評価額によるとはされていません)。
なお、家庭裁判所において、相続人らの合意がない場合の配偶者居住権の評価がどのように行なわれるのかについては、今後の実務の動向が大いに注目されるところです。おそらくは、上記2①、②の方法及び税制改正大網による評価等を総合勘案したものとなるのではないかと思われます。


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