1.株式は遺産分割の対象
株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないとされています(最高裁昭和45年1月22日判決、最高裁平成26年2月25日判決)。
これは、株式が、株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し、株式には株主たる地位に基づいて余剰金の配分を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利などの自益権のほか、株主総会における議決権などの共益権をも有しているため、このような株式に含まれる権利の内容、性質を考慮すると、単純なる可分債権とはいえないと考えられているためです。
したがって、株式は、遺産分割の対象として、遺産分割協議や遺産分割審判等によって、その帰属、配分等を決定することとなります。
2.遺産分割未了の場合
遺産分割未了の場合には、株式は準共有となります。
準共有となった株式は、そのままでは権利行使することができません。
共有者間において、権利行使者1人を定めたうえで、会社に対し、氏名を通知したうえで権利行使をすることが必要になります(会社法106条)。
上場株式の場合には、特にこの点は問題になりませんが、非上場株式で、しかも被相続人が経営者で大株主であるような場合には、相続人間で協議できないと、経営権をめぐる争いが生じることもありえますので注意が必要です。
この点を避けるためにも、被相続人の遺産に非上場株式がある場合には、事前に遺言を書くなどしておいたほうがいいでしょう。
3.上場株式について
上場株式は、最低売買数(単位数)が決まっているので、相続人間で分割する場合には、相続人が取得する株式数は、最低売買数を超えるようにした方がよいでしょう。
4.非上場株式について
非上場株式で、特に被相続人が経営していた会社の株式の場合には、その会社の経営者を誰にするかがその株式の取得者を決める際の重要な要素になってきます。
相続人の中で、その会社の後継者がいる場合には、できるだけその人が株式を取得するようにした方がよいでしょう。
5.名義書換
相続によって株式を取得した者は、株式の名義書換えをする必要があります。
名義書換えには、原則として、相続人全員の同意書や遺産分割協議書を提出する必要があります。
6.非上場株式の換価
非上場株式で、被相続人の保有する株式が少数の場合には、可能であれば売却して換価したいということもあります。
しかしながら、売却には困難なことが少なくありません。
これは、相続人(少数株主)に、会社法上、株式の買取を求める権利がないためです。
会社法上予定されているのは、会社が相続人に対し、相続により取得した株式の売り渡しを請求することだけで、相続人が会社に対し、買い取りを求めることは予定されていません。
したがって、非上場株式を換価しようと思っても、困難が生じることが少なくありません。