1 遺産分割調停の申立て
遺産分割について、当事者間で協議をすることができない場合、相続人の一部が、家庭裁判所に対して、遺産分割調停を申し立てることになります。
申立てに際しては、申立書や事情説明書等の他、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、相続財産に関する資料等が必要になりますので、あらかじめこれらを準備しておく必要があります。
遺産分割調停を申し立てると、家庭裁判所は、相手方に対し、調停期日の通知書、申立書の写し、進行に関する照会回答書などを送付します。
進行に関する照会書などについては、記載の上、家庭裁判所に返送する必要があります。
遺産分割調停に弁護士が相手方として受任する場合には、相手方の言い分をまとめた答弁書を提出することもあります。
2 遺産分割調停の期日
遺産分割調停期日は家庭裁判所で行われます。
そこで、各当事者は遺産分割調停期日に、家庭裁判所に出頭する必要があります。
東京家庭裁判所では、調停を行う調停室と、申立人待合室、相手方待合室があり、申立人は申立人待合室に、相手方は相手方待合室で待機することになります。
原則としては、申立人側、相手方それぞれが片方ずつ、調停委員に調停室に呼ばれ、双方の言い分を話し、調停委員がこれを調整していくことになります。ただし、第1回の調停期日では、当事者双方が調停室に同席し、顔合わせをすることもあります。なお、第2回以降の調停期日でも、状況によっては、双方(あるいは、双方代理人)同席して協議するということもあります。
1回の期日はおよそ2時間程度で、1か月半に1度程度、期日が設けられ、調停を進めていくことになります。
調停はあくまで合意による解決ですので、申立人と相手方双方が納得した場合に、調停が成立し、事件は終了ということになりますが、合意が成立しない場合には、調停が不成立となります。
この場合、調停手続から審判手続に移行することになります。
3 遺産分割調停の進め方
遺産分割調停のモデル的な進め方は、以下のとおりと考えられています。
①相続人は誰かを確認する。
通常は戸籍によって判断され、争いになりませんが、まれに、婚姻・養子縁組の無効などが争いになります。
②遺言の有無とその効力を確認する。
通常は遺言があるかどうかであり、争いになりませんが、遺言に不備があるかどうかなどで争いになることもあります。
③相続財産の範囲を確認する。
相続財産を隠している場合など、容易に範囲を確定できないこともあります。
また、葬儀費用等を相続財産(債務)とするかなどについても、争いになるケースは多いといえます。
そのほかに、名義預金などで、相続財産か否かで争いになることもあります。
④遺産の評価を検討する。
不動産や非上場株式などの場合には、評価額をめぐって争いになることもあります。
⑤寄与分・特別受益の有無を確認する。
生前贈与の有無や療養看護の評価などを巡って、争いになることがあります。
⑥各人がどれだけ取得するかを検討する。
上記のように、個別の論点に沿って、整理して主張することが望まれるため、各当事者としても、自身の主張を書面で整理して提出したほうがいいことも多いです。
論点が多い場合や、法的に難しい点が多いなどの場合には、弁護士に委任することも考えられます。