電話やウェブで遺産分割調停を行うことはできますか。

1 調停期日への出頭

 「遺産分割調停はどのように進められますか」で説明したとおり、遺産分割調停期日は家庭裁判所で行われますので、各当事者は、遺産分割調停期日の指定された時間に家庭裁判所に出頭する必要があります。
 当事者全員が裁判所に近いところに住んでいる場合は、裁判所への出頭はさほど困難ではありませんが、当事者の自宅が全国バラバラという場合、自宅から遠隔地にある裁判所に調停が申し立てられた当事者にとっては、当該裁判所に出頭することが困難なことがあります。

2 電話やテレビ電話の方法による調停手続

 家事事件手続法は、「音声の送受信により同時に通話をすることが出来る方法」つまり、電話やテレビ電話の方法によって調停手続を行うことができる旨を定めています(家事事件手続法258条1項、54条1項)。
 そのため、遠隔地の裁判所で遺産分割調停を行うことになった場合でも、毎回遠隔地に出向く必要はなく、電話会議の方法で調停を進めていくことが可能です。
 もっとも、弁護士を代理人に選任せず個人で調停を行う場合には、本人確認などの理由から裁判所への出頭を求められる可能性がありますので、1回目の調停期日から電話会議による調停が可能かどうかについては、事前に裁判所に確認しておく必要があります。
 弁護士が代理人として選任されている場合には、1回目の調停期日から電話会議による調停を行うことに特に問題はないとされていますので、一度も裁判所に出頭することなく調停を成立させることもできます。

3 ウェブ会議による調停手続

 最高裁判所は、離婚や相続などを扱う家事調停手続で、裁判所と弁護士事務所などをインターネットで結ぶ「ウェブ会議」の試行を、令和3年12月8日以降、東京、大阪、名古屋、福岡の各家庭裁判所で順次開始することを発表しました。
 裁判手続におけるウェブ会議とは、裁判所がパソコンを使用してウェブ会議を開催し、当事者や代理人に、自宅や弁護士事務所といった裁判所の外から、パソコン等を利用してウェブ会議に参加することで、期日を行うというものです。裁判IT化の一環として、民事裁判では既にウェブ会議が導入されていますが、家事調停事件でも順次導入されることとなります。
 家事調停にウェブ会議が利用されることによって、遠方の裁判所まで出頭する負担が軽減されたり、DV事案等の対立が激しい事案でより安全に、安心して調停に参加できるようになることが期待されています。また、当事者が裁判所に出頭せずに調停に参加できることから、新型コロナウイルス等の感染症予防策としても有用といえます。
 当面は、裁判所が当事者の意向や事件の内容に応じてウェブ会議の方法で調停を実施する必要性を考慮し、調停委員会が相当と判断した事件でウェブ会議が行われる見通しです。


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