1 遺産分割の期限
民法907条1項は、「共同相続人は,次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で遺産の全部又は一部の分割をすることができる。」と定めています。
この規定から判るように、遺産分割の期限は定められていませんので、被相続人が死亡してから何年たっても遺産分割はすることができ、遺産分割に時効はありません。
2 所有者不明土地の問題
このように、遺産分割については期限がないことも一つの原因となって、いつまでも被相続人の土地の遺産分割が行われず、その結果、土地登記簿により所有者が直ちに判明せず、若しくは、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」が生ずる結果となっています。
そこで、2021年4月21日に「民法の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立し、4月28日に公布されました。
これらの法律は、原則として公布後2年以内の政令で定める日から施行されることになっています。
3 民法904条の3
改正民法では、遺産分割ができる期間については、制限を設けませんでした。
しかし、民法904条の3として、以下の規定が新たに設けられました。
「前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。」
この前三条の規定とは、903条(特別受益者の相続分)、904条(903条の贈与の価額の算定)、904条の2(寄与分)の規定です。
ですから、原則として、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割は、法定相続分又は指定相続分によって行われ、従って、特別受益、寄与分は考慮されないものとなったのです。
このように、相続開始後10年を経過した後に遺産分割をすると、相続人によっては、
不利益を受けることになりますので、注意が必要となりました。