1.遺言がある場合
遺言があれば、原則として、その遺言で指定された者が指定された内容(相続分の指定、遺産分割方法の指定等)で遺産を取得することとなります。
したがって、この場合、法定相続分で取得することにはなりません。
なお、遺言による遺産の取得について、一定の制限を加える制度としては、遺留分の制度があります。
2.遺言がない場合
遺言がない場合には、法定相続として、民法で定められた相続人が民法で定められた割合で遺産を相続することになります(民法900条)。
具体的には、以下のとおりとなります。
① 配偶者と子が相続人である場合
配偶者と子の相続分はそれぞれ2分の1となります(民法900条一号)。
② 配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1となります(民法900条二号)。
③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となります(民法900条三号)。
④ 昭和55年より以前の相続の場合
昭和55年より以前の相続の場合、配偶者の相続分が異なりますので注意が必要です。
配偶者と子の場合 配偶者3分の1、子3分の2
配偶者と直系尊属の場合 配偶者2分の1、直系尊属2分の1
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者3分の2、兄弟姉妹3分の1
⑤ 相続人である子、直系尊属、兄弟姉妹が数人いる場合
原則として、各自の相続分は等しいとして、按分することになります。例外としては、兄弟姉妹の場合、両親を同じくする者と一方の親しか同じくしない者とでは、1対0.5の割合となります。
実子と養子との間で取得分に違いはありません。
⑥ 代襲相続人が複数いる場合
被代襲者の相続分を按分することになります。
例1 配偶者と子2人が相続人である場合
配偶者の相続分は2分の1、それぞれの子の相続分は各4分の1になります。
例2 配偶者と両親が相続人である場合
配偶者の相続分は3分の2、両親の相続分は各6分の1になります。
例3 配偶者と2人の兄が相続人である場合
配偶者の相続分は4分の3、それぞれの兄の相続分は各8分の1になります。
3.婚外子の相続分について
婚外子については、従前は、婚内子の相続分の2分の1とする旨民法上定められていました(民法900条四号但書きの従前規定)。
婚外子とは、婚姻届を提出していない男女間に生まれた子をいいます。
しかし、最高裁大法廷平成25年9月4日決定において、上記民法900条四号但書は、遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項(法の下の平等)に違反して無効となると判断いたしました。
そして、上記最高裁決定を受け、民法900条四号但書は削除されました。
したがって、現在では、婚外子も婚内子と同じ相続分として遺産を取得することができます。
最高裁大法廷平成25年9月4日決定について詳しくは、婚外子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書前段が憲法14条1項に違反するか【最判平成25年9月4日】をご覧ください。
4.遺産分割協議が成立した場合
相続人全員で遺産分割協議を成立させることが出来ます。
その際は、必ずしも上記の法定相続分どおりではなくとも、相続人全員が合意した内容、割合等により遺産を取得することになります。