相続分の譲渡をした場合の税金はどうなるのでしょうか

1 はじめに

 まず、この相続分の譲渡については、相続税の発生だけでなく、場合によっては、贈与税や譲渡所得税の発生も考えられます。
 この点、相続分の譲渡がなされた場合の課税関係については、確定した税務上の見解はございませんが、課税関係については、一般的に、次のとおり、説明されています。
 以下、共同相続人間において相続分の譲渡が行われた場合と共同相続人が自己の相続分を共同相続人でない第三者に譲渡した場合に分けて説明いたします。
 なお、相続分の譲渡の詳細については、「相続分の譲渡とはなんでしょうか」で説明しておりますので、ご参照ください。

2 譲受人が相続人の場合

 共同相続人間で相続分の譲渡がなされた場合、譲渡人たる相続人・譲受人たる相続人には、その譲渡が有償でも無償でも、相続税が課税されるのみであり、相続税が課税されたうえで、譲渡について、譲渡人たる所得税や譲受人に対する贈与税課税されるという問題は生じないと解されます。
 すなわち、有償による相続分の譲渡の場合は、実質的には代償分割と同様であると考えられるところ、代償金取得者に対する譲渡所得の課税はなされないので、これに準じて、相続分の譲渡人である相続人に対する譲渡所得税の課税はなされないと考えられます。
 無償による相続分の譲渡の場合も、法定相続分と異なる割合による遺産分割は可能であるが、法定相続分を超える取得者に対する贈与税の課税はなされないので、これに準じて、相続分の譲受人である相続人への贈与税の課税はなされないと考えられます。
 この点に関連し、未分割の遺産について共同相続人間で相続分の譲渡があった場合、「民法の規定による相続分」(相税55)には、譲渡にかかる相続分も含まれ、その譲渡の結果定まる相続分に応じて課税価格を算定すべきとした最高裁判所平成5年5月28日判決があります。

参照:相続税法55条
(未分割遺産に対する課税)
第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

3 共同相続人が自己の相続分を共同相続人でない第三者に譲渡した場合

 

(1) 相続分の譲渡人に対する課税関係

 この場合には、共同相続人間における相続人間における相続分の譲渡と異なり、相続人間での代償分割や、法定相続分と異なる遺産分割が行われたときと実質的同視することはできないものです。
 相続分の譲渡人である相続人は、遺産を一旦相続により取得したうえで、それに対する包括的割合持分たる相続分を第三者に譲渡したと解されます。
 よって、譲渡人である相続人には、相続税が課税されたうえで、さらに、有償の譲渡の場合は、それにより生じた所得に対し、所得税の課税がなされることになります。
 なお、無償の譲渡の場合は、所得税課税はなされないことになります。

 

(2) 相続分の譲受人に対する課税関係

 他方、譲受人である第三者には、相続税の課税はなされず、譲受が無償であれば、贈与税の課税がなされると考えられます。

4 おわりに

相続分の譲渡をする場合においては、相続税や譲渡税といった税務上の観点も含めて検討する必要がありますので、相続に精通した専門家に相談することが望ましいです。


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