1 本来の意味の「再転相続」「再転相続人」
(1) 第1の相続の被相続人Aが死亡し、その後、Aの相続人Bが相続の承認も放棄もしないで熟
慮期間内に死亡し、第2の相続の被相続人Bとなった場合には、第2の相続における相続人C
(再転相続人)が、第1の相続の相続(第1次相続)につき放棄・承認の選択をする地位も含め
て、死亡した第1の相続人Bを相続します。これを再転相続といい、この場合のCが再転相
続人といわれます。
(2) この場合、CはAからBへの相続(第1次相続)と、BからCへの相続(第2次相続)という連
続する2つの相続につき、別々に承認・放棄の選択機会をもち、かつ、熟慮期間も別々に定ま
ることになります。なお、再転相続人による相続放棄の有効性が争点となったケースにおいて
再転相続の熟慮期間の起算点は自己が再転相続人となった事実を知った時であるとする重要な
最高裁令和元年8月9日判決がありますので、ご留意下さい。
(3) 上記(1)(2)の再転相続を本来の意味の再転相続、あるいは、狭義の再転相続といいます。
2 広義の「再転相続」「再転相続人」
(1) これに対して、第1の相続(とりわけ共同相続の場合)において、既に単純承認の効果が生じ
ており(本来の意味の再転相続とは異なります)、未分割の遺産がある状態で共同相続人の1人
が死亡し、第2の相続(共同相続)が開始している場合も、再転相続といわれることがありま
す。
この場合を含めて、学説上、広義の再転相続といわれることがあります。
(2) この広義の再転相続の場合に、第2の相続についても承認の効果が生じているときは、家庭
裁判所の実務においては、第1の相続と第2の相続を一括して処理して、第1の相続のみを対
象とする遺産分割をしないのが一般的であるといわれています。
(3) また、この広義の再転相続の場合において、たとえば、第1の相続の被相続人がEであり、
Eの相続人が妻F、子G、Hであり、第2の相続の被相続人がFであり、そのFの相続人が
G、Hであるとして、GがFから特別受益に当たる贈与を受けていた場合、第2の相続におい
てFの遺産として、第1の相続におけるEの遺産についてのFの共有持分も遺産分割の対象と
なり、GがFから受けた特別受益について持戻しをして、相続人間の具体的相続分を算定する
ことになります。