1 遺骨をめぐるトラブル
被相続人の死後、遺産とは別に、遺骨の取り扱いをめぐって相続人間でトラブルになることがあります。
そして、遺産分割調停において、遺骨を誰が取得するか、分骨するか、などが話し合われることもあり、遺産の分割と並んで遺骨についても解決できることもあります。
しかしながら、遺産分割調停などで、遺骨の取得者について解決がつかない場合、遺骨は遺産ではないため、遺産分割の対象にはならず、遺産分割審判でも直接には遺骨の取得者は判断なされません。
2 遺骨の所有者
遺骨については、そもそも、遺骨が法律上の「物」なのかという問題もあります。
法律上「物」かどうかというのは、後述のとおり、法律上返還請求をすることができるかどうか、という問題と直結しています。
この点については、法律上は「物」と考えられています(逆に、当然のことですが、人が生存している間は、「物」として取り扱われません。)。
そして、法律的には、遺骨は、祭祀を主宰すべき者に帰属する、と考えられています(最高裁平成元年7月18日判決)。
祭祀の主宰者とは、系譜(家系図など)、祭具(位牌、仏壇など)、墳墓(墓石、墓碑など)の権利者をいいますので、これらの権利者と遺骨の所有者が同一となるのは当たり前と言えば当たり前のことです。
3 祭祀の主宰者
祭祀の主宰者が誰かについては、第1に被相続人の指定により、第2に慣習により、第3に家庭裁判所の審判により定まります。
したがって、遺言で祭祀主宰者が指定されている場合には、指定されたものが祭祀主宰者となり、遺骨の取得者となります。
また、遺産分割調停において、祭祀主宰者を決めることも可能と考えられていますので、祭祀主宰者が決められた場合には、その者が遺骨の取得者となります(もちろん、調停において、遺骨所有者を別途定めることも可能です)。
家庭裁判所の審判において、祭祀主宰者を定めることもできますが、この審判は、遺産分割審判とは別に申し立てる必要があります。
4 遺骨の返還請求
以上のとおり、遺骨は「物」であり、祭祀主宰者に所有権があるということですので、遺骨を祭祀主宰者以外の相続人が所持しているなどという場合には、遺骨の返還請求訴訟を提起して、これを取り返すことも可能と考えられます。