電子マネーは相続の対象になりますか

1 はじめに

 電子マネーを活用している人やポイントを貯めているという人は、近年、増加傾向にあります。では、これらを持っていた人が亡くなった場合、電子マネーや貯めたポイントは相続の対象となるのか解説いたします。

2 電子マネーとは

 電子マネーとは、日本銀行の説明によれば、「一般に、利用する前にチャージを行うプリペイド方式の電子的な決済手段を指します。利用者は、電子的なデータのやり取りを通じて、現金(貨幣や紙幣)と同じように、モノを買ったりサービスを受けたりすることができます」とされています。
この定義によれば、クレジットカードは電子マネーには当たりません。
(参照:日本銀行ホームページ
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/money/c26.htm)
 電子マネーは、主に従来からのカード形式のものと、スマートフォン等で利用するものが存在しています。このような特徴がある電子マネーはいくつもの種類がありますが、主に次のとおりです。

・交通系
主に電車やバスなどで使用できる電子マネーです。
例:Suica、PASMO等

・流通系
コンビニやスーパーでも利用できる電子マネーです。
例:nanaco、WAON等

・QRコード決済系
QRコード決済系は、スマートフォンを通じた電子マネーです。
例:PayPay、LINE Pay、楽天ペイ、d払い等

3 電子マネーは相続の対象になりますか

 電子マネーの利用については、利用者と決済サービス会社との契約関係に基づくものですので、相続できるかどうかは、各会社の約款によります。
ただ、一般的には、相続できることが多いです。
 例えば、東日本旅客鉄道(JR東日本)が発行している交通系IC電子マネー「モバイルSuica(スイカ)」の利用規約には、会員が死亡した場合、法定相続人が所定の手続きを行った上で払い戻し請求ができると記載されているますので、相続は可能です。

“モバイルSuica会員が死亡した場合は、その時点で退会したものとみなし、法定相続人が当社の定める手続きにより払いもどしの請求をしたとき、当社は退会の手続きを行います”
出典:モバイルデバイスにおけるSuica利用規約第21条

また、LINE Payが提供する同名の電子決済サービス「LINE Pay」のLINE Moneyアカウントの利用規約にも、所定の手順を踏めば、振込手数料を引いた上で相続人に返金する旨が書かれています。

“LINE Moneyアカウント保有者に相続が発生し、LINE Moneyの残高がある場合、当社所定の方法により、相続人に対し、振込手数料を引いた上で返金いたします。なお、振込手数料がLINE Moneyの残高を上回る場合には返金は行いません”
出典:LINE Moneyアカウント利用規約第3条5項

 そして、PayPayについても、相続や承継が可能である規定となっております。

“利用者に相続が発生し、利用者のPayPay残高アカウントにPayPayマネーまたはPayPayマネーライトの残高が残っていた場合、当社は当社所定の方法に基づき、法令に定める例外事由等を考慮の上、当該利用者の保有するそれらの残高を正当に相続又は承継すると当社が確認した者に対し、振込手数料を控除した額を振り込みます”
出典:PayPay利用規約第5条

4 貯めたポイントは相続の対象になりますか

 ポイントにも、さまざまなものが存在します。例えば、小売店での購入金額や来店回数等に応じてスタンプが付与されるカード型のポイントカードもその一つです。また、楽天ポイント(楽天グループ株式会社)やTポイント(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)等の電子的なポイントもあります。
しかし、結論からお伝えすると、ポイントは、貯めた本人のみが使用することが想定されており、相続の対象とはならないことが一般的です。
ただし、例外的に相続が認められているポイントも存在します。
その代表的なものは、航空会社のマイレージです。
例えば、ANA(全日本空輸株式会社)やJAL(日本航空株式会社)のホームページには、相続が起きた際の案内も記載されており、亡くなった人の貯めたマイレージポイントを相続人が引き継ぐことができるとされています。
(ANAマイレージクラブ)
21条 会員の死亡
会員が死亡した場合、法定相続人は、会員が積算していたマイルを、所定の手続きが完了した時点で有効な範囲で承継することができます。その際、当該法定相続人は弊社に対し、故人である会員のマイルの相続権を有することを証明する書類を、会員の死亡日から180日以内に提示する必要があります。相続の申し出が前記の期間内になされない場合は、当該会員の積算マイルはすべて取り消されます
(JALマイレージバンク一般規約)
第14条
マイルの相続については、会員が死亡した際、法定相続人は所定の手続きにより会員のマイル口座に残る有効なマイルを相続することが可能です。


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