1 遺産分割方法の指定とは
遺産分割方法の指定とは、文字どおり遺言において、遺産分割の方法を指定することです(民法908条)。
指定の方法には、いくつか種類がありますが、もっとも一般的なのは、「甲には不動産を、 乙には預貯金及び現金を取得させる」 というように、 特定の財産を特定の相続人に処分させるのかを指定するものです。
また、「不動産を売却して、その売却金は甲乙各2分の1を取得する」といった、清算を必要とする遺言も、遺産分割方法の指定と考えられます。
そのほかにも、 「家業は甲に委ねる」など指針を示すだけの場合や、「財産は甲がすべて取得して乙は代償金を支払う」など分割の手段を定める場合もあります。
2 遺産分割方法の指定の効果
(1)分割の指針や手段を定める場合
遺産分割方法の指定が、分割の指針や手段を定めるものである場合には、当該遺言だけでは、遺産の最終的な処分先が分かりません。
たとえば、「家業を甲に委ねる」といっても、家業を行う会社の株式を甲が取得するというだけなのか、家業を行っている不動産を甲が取得するということなのかもわかりませんし、 その他の財産をどう分配するのかもわかりません。
そこで、このような遺言の場合には、別途、遺産分割協議を行う必要があります。
もちろん、遺産分割協議を行うにしても、遺言内容を尊重することになります。
(ただし、全相続人が同意した場合には、遺言内容と異なる遺産分割協議をすることもできます。)
(2)特定の財産の処分を定める場合
特定の財産を特定の相続人に処分させることを定める遺言は、「相続させる旨」の遺言と考えられますので、遺産分割協議を行わずとも、権利が移転すると考えられます。
そこで、遺産分割協議を経ずに、預貯金の解約や移転登記を行うことも可能と考えられます。
3 遺産分割方法の指定の委託
遺産分割方法の指定は、第三者に委託することも可能です(民法908条)。
たとえば、「家業は甲に委ねる。具体的な内容は、乙に決めてもらう。」などといった遺言を作成することも考えられます。
なお、相続人がこの受託者になることができるかどうかについては、見解が分かれています。
4 遺産分割の禁止
逆に、遺産分割を禁止する内容の遺言を作成することも可能です。
ただし、遺産分割を禁止することができるのは、相続開始のときから5年内に限られます(民法908条)。