1 一部の財産のみの遺言も可能である
遺言では、全ての財産の処分を決める必要はなく、一部の財産の処分のみを定めることも可能です。
特定の財産については特定の相続人に取得してもらいたい、もっとも、他の財産については、誰がどう取得しても相続人の間で決めて構わないというのであれば、このような内容の遺言を作成することも特に問題はありません。
もっとも、遺言で処分を定めなかった財産については、相続人間で遺産分割協議を行わなければなりません。
したがって、もし相続人間でスムーズに分割協議を行うことがあまり期待できないような場合には、このような内容の遺言はかえって紛争を生じさせかねませんので、全ての財産の処分を定めた方がよいといえます。
2 「その他の財産」を記載しておく
逆に、すべての財産を遺言に記載したとしても、一部の財産が抜け落ちていることもありえます。
このような場合にも、抜け落ちた財産については、相続人間で遺産分割協議が必要になることもあります。
このようなことを防ぐために、遺言にはあらかじめ、「その他の財産」を誰が取得するのかをあらかじめ記載しておくことをおすすめします。
3 遺言に記載しなかった財産を誰が取得するか
遺言に記載されなかった財産は、法定相続分で分配されるとは限りません。
遺言により、一部の財産を取得した場合、それは特別受益に該当すると考えられますので、遺産分割を行う際には、遺言に記載された財産を持ち戻して計算することになるのが原則です。
つまり、遺言により財産を取得した者も、遺言に記載された財産を含めた相続財産の法定相続分(遺言に記載された財産と、その分減らされたその余の相続財産)しか受け取ることができないこともありえます。
もし、遺言者がこのような分け方ではなく、遺言により財産を取得した者にも、遺言に記載されなかった財産を法定相続分で分配してほしいと考えているのであれば、遺言において、「持戻し免除の意思表示」を行っておく必要があります。
遺言において持戻し免除の意思表示がなされれば、遺言に記載されなかった財産は、法定相続分で分配されることになります(ただし、遺留分の問題が生じることもあります)。