1 遺言を発見した場合
遺言が公正証書遺言以外の方式による遺言の場合、すなわち、自筆証書遺言または秘密証書遺言である場合は、遅滞なく家庭裁判所に提出して、その検認を受けなくてはなりません(民法1004条)。
なお、相続法改正に合わせて、自筆証書遺言について法務局で保管する制度が開始されます(保管開始は、2020年7月10日)。この法務局で保管される自筆証書遺言については、検認は不要の扱いとなります。
検認は、遺言の保管者が相続の開始を知った後、遅滞なく、相続開始地の家庭裁判所に提出して行う必要があります(民法1004条1項)。
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法1004条3項)。
以上の手続きを守らない場合、すなわち、遺言書を家庭裁判所に提出することを怠ったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外において遺言書の開封をした場合には、五万円以下の過料に処される可能性があります(民法1005条)。
また、遺言の保管者が遺言書を隠匿した場合には、相続欠格となる可能性もありますので注意が必要です(民法891条5号)。
2 遺言の検認手続
遺言の保管者は、遺言者の最後の住所地又は相続開始地の家庭裁判所に検認を申し立てます。
検認が申し立てられると、裁判所は申立人と相続人に対して検認期日の通知をします(家事事件手続規則115条)。
これによって、相続人は遺言の存在を知ることになります。
そして、検認期日では、相続人立ち会いのもと、家庭裁判所が遺言書を開封するとともに、遺言の方式に関する一切の事実を調査し、検認調書が作成されます(家事事件手続法211条、家事事件手続規則113条、114条)。
この際、相続人に対し、遺言が自筆であるか、押印が遺言者のものであるかどうかを確認されます。
検認手続が終わると、遺言書は検認済証明書を添付されて返却されます。
3 検認の意味
検認は、遺言書の偽造・変造を防ぐための証拠保全手続です。
ここで、証拠保全手続というのは、検認により、家庭裁判所において遺言書の状態が確認されるため、それ以降の偽造・変造を防ぐことができるという意味です。
検認が証拠保全手続である以上、検認の手続きを経なくとも、遺言の効力に影響はありませんし、検認を受けたからといって、遺言書が有効になるものでもありません。
遺言の有効性に争いがある場合には、後に遺言無効訴訟等によって、遺言の効力を争うことが可能です。
ただ、法的な効果とは別に、実務上、不動産の相続登記手続や、預金の名義変更や払戻し手続きなどについては、検認を行わないと認められないことが通常です。