1 遺贈の放棄をすることはできる
被相続人から遺贈を受けたとしても、他の相続人との関係などから、受遺者が遺贈を辞退したいという場合もあります。
このような場合、受遺者は遺贈を放棄することができます。
遺贈内容が可分の場合には、一部のみを放棄することも可能と考えられています。
2 遺贈を放棄する方法
遺贈を放棄する方法については、遺贈が特定遺贈か、包括遺贈かによって異なります。
(1)特定遺贈の場合
特定遺贈の受遺者は、いつでも遺贈を放棄することができ(民法986条1項)、時期に制限はありません。
この場合の放棄は、相続人または遺言執行者に対する意思表示により行うことになります。
そして、遺贈を放棄した場合、遺言者の死亡の時にさかのぼって効力を生じます。
(2)包括遺贈の場合
包括遺贈の受遺者は、相続の放棄・承認に関する規定が適用されることから、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する方法により、遺贈の放棄を行う必要があります(民法938条、915条)。
また、3か月以内であっても、相続財産の全部または一部を処分した場合には、単純承認したものとみなされ、遺贈の放棄を行うこともできなくなります(民法921条)。
3 相続分だけ受け取ることもできる
相続人の一人が、法定相続分より多い割合の割合的包括遺贈を受けたが、その相続人としては、自分だけ多く受け取ることを望まない場合もありえます。
このような場合に、遺贈を放棄しても、当該相続人は、相続人としての地位までも放棄をしたことにはならないため、法定相続分については、遺産を取得することができます。
もし、相続人としての地位も放棄することを希望する場合には、別途相続放棄の手続きも取る必要があります。
4 遺贈の放棄に関する催告
受遺者が遺贈の放棄をするか明らかにしない場合、相続人は、受遺者に対して、相当の期間を定めて、遺贈の承認か放棄を行うことを催告をすることができます。この期間内に受遺者が返答しない場合には、遺贈を承認したものとみなされます(民法987条)。
5 遺贈の放棄の撤回
一度行った遺贈の承認及び放棄は、撤回することができません(民法989条1項)。
ただし、承認・放棄が詐欺取消などの事由に該当する場合には、これを取り消すことはできます。
6 相続させる遺言の放棄
相続させる遺言により財産を取得した相続人が、遺言の利益を放棄できるかどうかについては、見解が分かれています。
放棄を認めなかった例については、「相続させる旨の遺言により相続財産を承継した相続人は、遺言の利益を放棄することができないとされた事例」をご覧ください。