1 遺言執行費用とは
遺言執行費用とは、
①相続財産の管理費用
②移転登記費用
③預貯金の解約・払戻に関する費用
④相続財産目録の作成費用
⑤遺言執行者の報酬
などがこれにあたります。
明確化のために、遺言において、遺言執行費用の具体例を明示する例も多いと思われます。
2 遺言執行費用の支出
これら遺言執行費用は、相続財産の負担となるため、相続財産から控除して支払われます(民法1021条)。
清算型遺贈では、換価後、遺言執行を差し引いたうえ相続人に分配する例も多いと思われます。
遺言執行費用によって、遺留分を減ずることはできないため(民法1021条但書)、遺留分から遺言執行費用を支払う必要はありません。
したがって、遺言執行費用は受遺者の取得分から支払われることになります。
遺言執行費用が相続財産の額を超える場合には、相続人に請求することはできないと考えられています。
そして、遺言執行費用が、遺留分にかかる部分や、相続財産の額を超える部分については、受遺者が負担すべきと考えられています。
なお、受遺者が相続人であることも多いですが、この場合はもちろん、最終的には相続人が負担することになります。
以上をまとめると、
①相続財産(遺留分は除く)
②受遺者(受遺相続人を含む)
の順に負担することになります。
3 遺言執行者の報酬
遺言執行者の報酬も遺言執行費用になります。
遺言執行者の報酬額は、遺言に定めがある場合はそれによります。
料率などについて、特に法律上の規定はありませんが、弁護士が遺言執行者になる場合には、旧弁護士会報酬基準規程などに沿って決めることが多いように思います。
なお、旧規程に基づく遺言執行報酬は以下のとおりです。
①基本
経済的な利益の額が
300万円以下の場合 30万円
300万円を超え3000万円以下の場合 2%+24万円
3000万円を超え 3 億円以下の場合 1%+54万円
3億円を超える場合 0.5%+204万円
②特に複雑又は特殊な事情がある場合
弁護士と受遺者との協議により定める額
③遺言執行に裁判手続を要する場合
遺言執行手数料とは別に,裁判手続きに要する弁護士報酬を請求できる。
遺言に定めがない場合、遺言執行者は、相続開始地の家庭裁判所に対し、報酬付与の審判の申立てを行うことができます。
家庭裁判所は、遺言執行者の状況や、遺言執行に要した労力等を考慮して、報酬額を決めます。
なお、報酬付与の審判が確定した場合には、特段の事情がない限り、報酬額を争うことはできないと考えられています。