みなし相続財産

① 相続税法上の「みなし相続財産」とは、亡くなった人(被相続人)から相続した財産(民法上
 の相続財産)ではないのに、相続したとみなして相続税が課税される財産のことをいいます。た
 とえば、死亡保険金など生命保険契約に関する権利、死亡退職金などが典型例となります。遺産
 そのものではないので、相続人間の遺産分割の対象とはなりません。相続税の課税上は、一定の
 非課税枠が定められることが多く、優遇されているといえます。
② 民法上の「みなし相続財産」とは、いわゆる特別受益といわれるものです。「被相続人から、
 遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がある
 ときは、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産
 とみなし…」(民法903条1項)と定められています。この「みなし相続財産」は、遺産分割
 の際に、各相続人の相続分を算定するために計算上用いられるもので、過去に贈与を受けた財産
 等を実際に持戻させるというわけではありません。なお、贈与を受けたことが遺留分侵害額請求
 の対象となる場合、その侵害額の限度では、実際に戻させられることになります(民法1046
 条)。
③ また、民法906条により、被相続人死亡の後に預金の無断解約がなされた等の場合に、解約
 した者以外の相続人の同意があれば、解約された預金が「遺産の分割時に遺産として存在するも
 のとみなすことができる」と定められております。これは「みなし遺産」といわれており、遺産
 分割の対象となります。