暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないというしくみ(租税特別措置法第七十条の二の四)を用いた贈与方法のことです。
非課税で毎年110万円を移せることから、相続税対策としてよく利用され、対象は110万円以下ならばお金だけでなく、土地や建物も含まれます。
ただ土地や建物は登記手続きなど手間や費用がかかることから、不動産を対象とした暦年贈与はあまり行われていません。
なお、贈与税はかからないとしても、遺産分割等において、特別受益と評価される場合はあります。特別受益については、「生計の資本としての贈与とはなんですか」(相続Q&A)をご参照ください。
※令和4年度の税制改正に関しては、相続税の節税策として世間に浸透している「暦年贈与」の見直しが議論されていました。
また、令和4年度税制改正大綱において「経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では、家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。」旨の記載があり、基礎控除の見直しの可能性が指摘されています。
結果的に、令和4年の税制改正には盛り込まれずに終わりましたが、引き続き「暦年贈与」について、廃止を含めた見直しが行われる可能性は残っています。
租税特別措置法
(贈与税の基礎控除の特例)
第七十条の二の四 平成十三年一月一日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第二十一条の五の規定にかかわらず、課税価格から百十万円を控除する。この場合において、同法第二十一条の十一の規定の適用については、同条中「第二十一条の七まで」とあるのは、「第二十一条の七まで及び租税特別措置法第七十条の二の四(贈与税の基礎控除の特例)」とする。
2 前項の規定により控除された額は、相続税法その他贈与税に関する法令の規定の適用については、相続税法第二十一条の五の規定により控除されたものとみなす。